正午を過ぎた。
 暑い。
 これから3時頃までは、さらに暑いだろう。

「あ……あら……どうしたのでしょうか……」
 あやめの視界が少しづつ霞みはじめた。
 幽霊が活動できる温度には限界(?)がある。
 霊力のガードがあるとはいえど、その限界に近く
なって、あやめの霊体は自然に『眠く』なっていっ
た。

「むにゃむにゃ……」
 あやめの身体がすぅーっと宙に浮いて、やがて輪
郭がなくもやもやとした何かに変わって、彼女は昼
寝に入った。

 そう、長く眠っていた記憶がある。
 何年も、何十年も、彼を待って、待ち続けて、い
つの間にか眠り込んでいたらしかった。
 今は丘の上公園と呼ばれている、あの場所で。
 そして確かにあのひとの気配を感じて、ふと目を
覚ました。

「……様」
 再びあやめが目覚めた時には、もう日が傾き始め
ていた。

洗濯物を取り入れる
夕飯の支度をする