「さぁ、お洗濯を始めませんと」
 未だに慣れないながらも、全自動洗濯機に、シャ
ツやらズボンを放り込む。
 前に教わったとおりに、ポイポイっと洗剤を加え
て、スタートボタンを押した。

 ごうぅんごうぅん……。
 唸る洗濯機を眺める。
 本当にこれで洗えているのかしら?
 どうにも信用出来ないので、彼の下着だけは洗濯
機に掛けられないでいた。
 台所に洗面器を持っていって、水を張り、洗剤を
付けてごしごしっと洗濯板に擦り付ける。

 やがて洗い終わったものを、良く引き絞ってまと
めた。
 これって大変だけど、至福。
 あやめは改めてそう思った。
 大好きなあの人と、同じ屋根の下に暮らしている。
 それを思えば、慣れない家事の苦労なんて吹き飛
んでしまった。

「はあぁ……」
 しかし疲れたのか、それとも彼のことを思ってな
のか、少し顔を赤らめてぼーっとしている。
 すると。
 しゅうううううーっ……。
 あやめが手にしていた(正確には手に持ったつも
りで浮かばせていた)洗濯物から湯気が……。

 霊力である。
 日光に弱く、締め切った部屋に暮らすあやめは、
この幽霊ならではの万能の力で、洗濯物を干してい
た。
 だが本人は、
「今日はいい天気ですわね、すぐに乾いてしまいま
したわ」
 良くわかっていないらしい。わからないまま、あ
やめは残りの洗い上がった物を窓の外に下げた。

 続いて台所の洗い物を済ませると、あやめは少し
息抜きをすることにした。

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