ジリリリリリリリ……。

 ふぁあ……朝か。
 一人暮らしにも慣れたつもりでいるが、相変わら
ず目覚まし無しには起きられないな。
 毛布を頭からかぶったままベッドからのろのろと
手を伸ばし、目覚し時計のスイッチを切る。

 ……ふぅ。

 まったく、この瞬間がたまらない。
 目覚めのひとときの心地よさはなにものにも代え
難い。
 たとえ学校で遅刻魔王と言われ、蔑まれたとして
も、俺にとってこの時間は無くてはならないものな
のだ。
 このひとときを邪魔するものは、例えどんな奴だ
としても……。

「たかちゃーん、起きてるぅ?」
 と、いきなり毛布が跳ね除けられた。
「だあっ! 誰だ、俺の安眠を邪魔する奴ぁ!?」
 あまりの突然の出来事に、ベッドから転がり落ち
そうになりながら、至福の時を邪魔した奴を確認し
た。

 毛布を跳ね除けたのは、鳴海理央。お隣さんの中
学3年生。
 俺が今住んでいるアパートの大家の娘だ。
 自他共に認める正真正銘の幼馴染みで、俺に対し
てはとことん遠慮が無い。

「何だ、理央か」
「あれ、たかちゃん、誰か他に起こしに来てくれる
予定でも入ってた?」
「そんなのねえって。それより理央、おまえどうやっ
てここに入った?」
 理央は、週に何回か、思い出したように訪れては
俺を起こしに来てくれる。
 いつも特に気にはしていなかったのだが……どう
やって入ってくるのだろう?

「普通に、鍵あけて玄関からだけど?」
「え? ……な、何でおまえが鍵持ってるんだよ。
犯罪だぞ、それ!」
「なに言ってるの? だってほら。ウチ、大家だよ」
「いや、そういう問題ではなくてだなあ……」

「んもう、そんなことより、さっさと起きて学校行
く用意しなさいよぉ」
 むう。
 とりあえず、俺は……

時計を見る
あと5分だけ眠らせてくれ