教室に滑り込むと、予鈴が鳴った。
 俺が席に着くと、ポンと肩を叩かれた。

「よお、遅刻魔王くん。おはよう」
「誰が魔王だっ」
「じゃあ遅刻大魔神だ。喜べ、腐っても神だぞ」

「ったく、お前だって、ひとの事言えるのかよ……
今来たくせに」
「なははっ」
 こいつは竹田明彦。俺がこの月夜野学園に来て以
来の悪友だ。
 場を盛り上げるムードメーカー的な奴だが、どー
もノリが軽すぎる所は問題かもな。

「そういや、さっき葉月に会ったが、お前のこと探
してたぜ」
 坂上葉月は、合気道部の主将。男勝りの腕っぷし
と、さっぱりとした性格とで、女の子にモテる女…
…って言うとなんか怪しい感じがしちまうが。
 しかしまぁ、事実そうなんだから仕方が無い。

「葉月が? なんだろうな」
「ああ、なんか頼みたいことがあるとか言ってたけ
ど」
「そうか、判った」

 クラスを眺め廻して葉月の姿を探したが、どうや
ら居ないらしい。どうしたんだろう?
 まぁ、後で聞いてみよう。

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